合同展示会は間近に迫っていた。愛子はクレパスを走らせ懸命に描いていた。どんなテーマにしようか迷っていたが10日ほど前にやっと決めて2割ほどが仕上がった。
窓から見えるグラウンドでは相変わらず運動部の掛け声やボールの音が入り混じっていた。ふいに窓に目をやりいつものように朝倉の姿を追った。いつしか愛子は頭の中で朝倉の事がいっぱいになっている自分が気がついた。水飲み場で初めて言葉を交わした日から特に意識が大きくなっていった。
それから一週間が過ぎ,県内の高校総体が始まり運動部以外の生徒は野球部、テニス部、ハンドボール、そしてラグビー部の外でプレーする部を中心に応援に借り出された。
希望した部を応援できる事になっていたのでもちろん愛子はラグビーを希望し隣の市のY市にバスで行き、応援席に着いた。応援席を見回すと最前列に朝倉はいた。中央の席に座った愛子のまなざしは自然に朝倉の方へ向けられた。
試合中、朝倉が後ろを振り向きちらっと目が合った。そこで朝倉はあの人懐こい笑顔をしながら頷いてみせた。愛子も軽く頷き微笑み返した。二人が顔を合わせたのはそれだけで朝倉は熱心に後輩の応援で声を張り上げていた。試合は66対23で愛子の高校の圧勝だった。拍手しながらラグビー部を褒め称え喜びの渦の中で最前列を見つめるとそこにはもう朝倉の姿はなかった。
翌日、翌々日と愛子はラグビーの応援に行かず、高校の美術室にいた。順当に勝ち残ったラグビー部はこの日決勝戦だった。もう展示会も間近にせまっているので最終段階にかかろうと居残りをする事に決めたのだ。
それから数時間後、校内アナウンスが流れ、決勝は惜しくも僅差で敗れたとの放送が流れた。