朝倉から電話がきたのはそれから数日後だった。今度の日曜日、よかったら食事でもしようという事だった。
待ち合わせの場所にあらわれた朝倉は白いTシャツに、上はブルーとイエローの格子のシャツ、下はジーンズを穿いてきた。いつも薄汚れた運動着、それもあの黄色いラガーシャツを着ることが多い朝倉の私服は若者らしく清々しかった。一方、薄いピンク色のブラウス、無地でベージュのフリルのスカートを穿いた愛子の服装は朝倉の気持ちを高揚させた。
イタリアンレストランでランチをした二人は互いに部活の事を中心に話し合った。
愛子「私、大学は美大を受けようと思ってたんですが、もうひとつ候補を見つけたんです。」
朝倉「ほう、それはどこに?」
愛子「実は、朝倉さんと同じ大学へ」
朝倉「えっそれは嬉しいけど、よく考えてからにしてくれよ」
愛子「ええ、でもこないだの試合がとても雰囲気良かったから」
朝倉「でもそれは君の将来にも関わってくるわけだし、雰囲気だけで決めるのはちょっとな・・」
愛子「いえ、雰囲気だけじゃなくてあの・・」
朝倉「・・?」
愛子「いいんです。この話はまた・・」
話を途中までして食事を終えた二人は歩いて5~7分ほどの河川敷内にあるT公園に辿り着いた。
朝倉が話しかけてきた。
朝倉「さっきの話なんだけどさ」
愛子「はい」
朝倉「もしかしてそれって俺の・・」
愛子「実はそうです。私、朝倉さんの事・・朝倉さんのそばにいたいんです。」
朝倉「・・・俺のそばに、俺のために・・本当か?」
真っ直ぐに愛子の目を見つめる朝倉。こくりと頷きゆっくりと彼を見つめ返す愛子の眼差し。お互いの視線が絡み合い、浅黒く日に焼けた朝倉の顔が白く透き通った愛子の顔に近づいてきた。そして遂に愛子の唇を朝倉の唇が捕らえた。動揺しながらも目を開けたまま愛子は彼を受け入れた。愛子の肩に朝倉の両手がかけられた。そしてゆっくりと瞼を閉じながら彼女は生まれて初めての口づけを交した。
公園の片隅で二人の影が重なりあった。昼下がりの柔らかい日差しが若い二人を優しく包んでいた。