約束の7月3日、愛子は学校の小体育館にいた。今年の合同展示会は特別会場を借りずに愛子の高校で行われる事になり、本校の生徒として雑事をこなさなければならなかった。
愛子は受付を担当し、来賓の客には名前を書いてもらい、時には会場内の案内もしなければならなかった。今年は「草原」という題材で出品した愛子だが、会場の作品をゆっくり見る間もないまま時間は過ぎていった。
時間は2時半になり、試合開始の時間になった。そわそわして落ち着かない愛子に友人のみどりは「どうしたの?何かあるの」と話しかけた。
愛子は少し迷ったが朝倉との事を簡単に説明した。
みどり「それだったら早く行きなさいよここは何とかなるから」
愛子「そんな事言っても・・今年はうちが会場だし」
みどり「でもお客さんも減ってきたしさ、いいわよ。何とかなるわ」
愛子「いいのよ、もう少し居るわ」
みどり「全く、あんたって・・」
生真面目な愛子の態度にみどりは呆れていた。
2時50分になり客は僅かになった。
みどり「ほんとに今いかなきゃ試合が終わっちゃうよ。さ、もう行かないと私知らないから」
愛子「わかった。ごめん、じゃ頼むわ。このお返しはきっとするから」
みどり「それじゃ、今度駅前のいつものお店でケーキおごってね」
笑いながらしゃべるみどりの言葉に愛子も微笑んで頷くと足早に会場をぬけ駅へ向かった。
駅から試合会場までは約30分、ぜいぜいと肩で息をきらして会場へ着くと、試合は終盤に迫っていた。良かった。間に合った。愛子はほっと一息ついた。
K大学との試合は白熱した展開が繰り返されていた。その時だ。ボールをキャッチし全速力で駆け抜ける朝倉の姿を見つけた。愛子は必死になって朝倉の姿を追っていた。彼はボールをしっかりと抱きかかえながらゴール下にトライを決めた。
W大学の学生から大歓声があがった。愛子も思わず拍手して「やったぁ」と呟いた。それから20秒ほどがたち終了のホイッスルが鳴った。大学生たちの中に挟まれて自分も少し大人びた気がして嬉しかった。‘私も朝倉さんのいる大学へ入りたい’微かな思いが愛子の中で湧き上がってきた。