マイベストソング①-Ⅳ <紅い花>
A子「ねぇ、○○、3、4日前に彼氏が他の子を連れて歩いていたわよ。」もしや、と思い続けていた出来事が、A子の言葉で真実味を帯びてきたのです。それから会う日を約束していた日になって彼女は問い詰めてみました。すると彼は取り乱して言うのです。
彼「ち、違うよあの子は高校時代の後輩だよ。たまたま街で会ってバスケの試合を見たかったっていうもんだから・・その後にお茶でも行こうって。ただそれだけだよ」
彼女「本当?」
彼「ああ、本当さ、俺が好きなのは○○だけだよ」。
バスケ部に所属していた彼は、社会人のバスケットの試合が好きでちょこちょこ見に行ってましたが、偶然2歳年下の女子バスケの後輩とばったり出会い、そこで話が弾んで今度また行こうと約束したというのです。そう言われ、その場はそれで収まりました。その後,二人のつきあいはそのまま続きました。たまには早く帰ろうと言い出す彼でしたが、「ごめん、おふくろが風邪で寝込んでるんだ。早く帰って夕食の手伝いくらい手伝わなくちゃな」といいながら、数年前に父親を病気で亡くし、兄と二人の男兄弟の彼は、母親思いを垣間見せる男性でした。彼女は「優しい彼の事だから、家族思いなんだわ。ちょっと妬けるけどね」と、はっきりしないところもあるけど、優しくて、素敵なあの人だから、これぐらいなんともないわ、と思っていました。
そんなある日、彼から突然言われました。
彼「なぁ、○○、家を出ないか!そこで一緒に暮らさないか?」と。突然の言葉に驚いた彼女でしたが、それは喜びの表情へ変わり、涙ぐんでしまいました。
彼「どうした?なぜ泣くんだ」
彼女「ごめんなさい、嬉しくって」
彼の話だと、前々から家を出たかったという事。うちを出て、独立して所帯を持ってる兄が、最近近所に家を新築し、もうすぐ引っ越してくるという事。父親を亡くし、いままで母を支えてきたが、兄が近くに来るというので決心したというのです。そんな彼の言葉を聞きながら、嬉しさのあまり、彼の胸に顔を埋めて泣き続ける彼女でした。抱き合う二人。明るい未来がやってくる、とその時はお互いを信じあった二人でした。
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