女の歌

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ディスコグラフィー(アルバム)

  • <small>木枯しの二人 伊藤咲子  歌謡デラックス</small>
    アルバムのディスコグラフィー。すべてサッコ本人のコメント付きです。

<big><b>ディスコグラフィー(シングル)</b></big>

  • <small>(番外)セブンイレブンファミリーソング「友達になろう」(非売品)</small>
    シングルのディスコグラフィー。すべてサッコ本人のコメント付きです。

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へばちゃん講座 ばちっこ

昨年の8/5以来の「危ない?」 から久々のへばちゃん講座です。久々というより随分ごぶさたしてたので、忘れ去られつつあるこのコーナーですが、You Tubeでこの映像を見つけたので投稿してみたくなりました。
http://www.youtube.com/watch?v=9stg5wdewhg

ご存知秋田出身の桜田淳子さんと桂三枝さんのトークです。秋田弁をしゃべってほしいと言われた淳子ちゃんが「三枝さんのばちっこはなんとしてるべか?」と言ってますね。ばちっこ?私は聞いた事はありますが、意味もわかりませんし、使ったこともありません。年配の女性に聞いてみたところ、意味はわかるが今じゃ使わないと言ってました。ばちっこ=末っ子の事だそうです。考えてみれば14歳で芸能界に入り、中学生で東京へ行ってしまった淳子ちゃんは故郷を離れて35年ほどになるわけですね。小さい頃から聞いて育った方言は昔よく使われた方言の方がかかえって覚えているのかもしれません。おそらく今秋田へ来られて方言まるだしで地元の人がしゃべると、彼女は意味がわからない方言がたくさんあるような気がします。

そういえば、淳子ちゃんもサッコちゃんもばちっこですね(笑)多分、淳子ちゃんはそう言われて育ったのでこの言葉をよく覚えていたのかもしれませんね。今回は私も覚えたばち、またはばちっこでした。

それでは最後に質問です。ばちっこが末っ子ならば、一番上の兄の事はなんというでしょうか?姉ならばあねつぁ、あねさん(どこかの世界の言葉みたいですが・・・苦笑)と言いますが。

へば(それでは)何かいいネタがありましたらいつかまたへばちゃん講座をやりたいと思います。

春にあるべきもの

「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、今年はそんな言葉は関係ないように思います。去年 の雪の多さにも辟易しましたが、今年は今年でまた異常気象のように感じまSp3150389 Sp3150392す。去年はSp3150385シーズン中、あの大雪はニュースでも何度も報道されご存知だとおもいますが、今年は彼岸に入っても一向に暖かくなる気配が感じられません。それどころか、かえって雪が降ってきたりして春なんてどこ吹く風?と思ってしまいます。いつもならば、こちらでも彼岸に入れば暖かくなり、雪が消えていくも のなんですがなんか冬へ逆戻りしているみたいです。

Sp2050224_1Sp2050219Sp1300217 今年の1月や2月は暖冬で‘ああこのまま春を向かえるのかな、気分はいいけどいいの かな!?何か物足りないな’なんてへたに油断して浮かれ気分でいると、このとおり3月に入ってから雪が降って、まだ我が家の屋根にも少量の雪が積もっています。あの1,2月のぽかぽか陽気は一体どこへいってしまったんでしょうか?

先週は息子の卒業式でした。途中で感極まって、ウルウルきそうでしたがなにしろビデオとデジカメを撮ってて集中してたもんで、その気持ちはなんとか堪えてハンカチは使用せずにすみました(汗・・)さて次は入学式といきたいところですが、もう少し暖かくなって残雪がなくならないとそういう気分にもなりません。東京ではおととい、桜の開花が発表されましたね。桜の花が咲く頃に小学校等の入学式というのが関東方面のごく当たり前の風景でしょうけど、こちらの季節はそうはいきません。桜の開花予想は4/15日という事ですのでまだまだ北国の春は遠そうです。

そういえば去年のサッコBPではサッコが4/2生まれで家族の方達がつけた「咲子」ちゃんの由来を説明されましたね。私としては充分「桜子」ちゃん、あるいは「桜」ちゃんでも可愛らしくて良かったんじゃないかと思うんですが。もちろん「咲子」ちゃんは歌手としての大輪の花を咲かせたんですから名前どおりの子になったわけですね。今年はどんなトークをしてくれるかまた楽しみであります。

マイベストソング② <恋人>Ⅹ完結編 それぞれの道へ

はじめて口づけをした日から数日が過ぎ二人は海へ行く約束をする。

眩しい愛子の水着姿が目に浮かび、忘れられない朝倉は海へ行った帰り道に愛子を求めようとする。驚いた愛子は抵抗して無言のまま朝倉が運転する車から降り自宅へ急いで帰る。

それでも朝倉が好きでたまらない愛子は朝倉からの連絡を待っていたが、数ヶ月経っても連絡がこない。自分から連絡しても繋がらずに落胆していたところへみどりかられんらくを受け、大事な話があるから今すぐ来るよう言われる。

井上と一緒に店で待っていたみどりから、朝倉がラグビーの練習中に大怪我をしラグビーがもうできなくなるかもしれないと言われた事を伝えられショックを受ける。

急いで病院へ駆けつけた愛子が見たのはギプスをした朝倉の姿だった。何日かおきに通いながら懸命に朝倉を支え励ます愛子。

奇跡的な回復をし、1ヵ月後に退院した朝倉ははじめてデートしたT公園へ行こうと愛子を誘う。

丘の上で再び愛を確かめ合ってふたりは将来のことを語り合う。

怪我が完全に治ったら朝倉はニュージーランドへラグビー留学を考えているという。期間は1年間。長ければもっとかかるかもしれないという。愛子には自分が選んで決めた道に進んでほしいと美大を受けるよう勧める。

愛子のすべてがほしいが今の自分は未熟なため、自分の選んだ道を突き進みたい。お互いに自信がついたら再びこの公園で会おうと誓い合う。

愛子の高校卒業式の翌日、一時帰国で帰ってきた朝倉とT公園で久々に再会する。厳しい留学生活だがラグビーは楽しいし、自分にはこれしかないと目を輝かせて生き生きさせる。だがニュージーランドにいても愛子の事を思い出し、頭から離れなかったという。
さらに逞しくなった朝倉を微笑ましく見つめる愛子。

ついにふたりは初めてその日に結ばれる。見つめ合いながら出合ったばかりの頃を懐かしく語り合う二人。

離れて暮らしていてもお互いを信じて支えあっていこうと話し合う。

朝倉はニュージーランドへ戻り、愛子は美大へ入学してそれぞれの道を歩み始めた。進んだ道は別々でもお互いに心で思いあうふたりだった。

マイベストソング② <恋人> 

 

マイベストソング② <恋人>Ⅸ はじめての口づけ

朝倉から電話がきたのはそれから数日後だった。今度の日曜日、よかったら食事でもしようという事だった。

待ち合わせの場所にあらわれた朝倉は白いTシャツに、上はブルーとイエローの格子のシャツ、下はジーンズを穿いてきた。いつも薄汚れた運動着、それもあの黄色いラガーシャツを着ることが多い朝倉の私服は若者らしく清々しかった。一方、薄いピンク色のブラウス、無地でベージュのフリルのスカートを穿いた愛子の服装は朝倉の気持ちを高揚させた。

イタリアンレストランでランチをした二人は互いに部活の事を中心に話し合った。
愛子「私、大学は美大を受けようと思ってたんですが、もうひとつ候補を見つけたんです。」
朝倉「ほう、それはどこに?」
愛子「実は、朝倉さんと同じ大学へ」
朝倉「えっそれは嬉しいけど、よく考えてからにしてくれよ」
愛子「ええ、でもこないだの試合がとても雰囲気良かったから」
朝倉「でもそれは君の将来にも関わってくるわけだし、雰囲気だけで決めるのはちょっとな・・」
愛子「いえ、雰囲気だけじゃなくてあの・・」
朝倉「・・?」
愛子「いいんです。この話はまた・・」

話を途中までして食事を終えた二人は歩いて5~7分ほどの河川敷内にあるT公園に辿り着いた。

朝倉が話しかけてきた。
朝倉「さっきの話なんだけどさ」
愛子「はい」
朝倉「もしかしてそれって俺の・・」
愛子「実はそうです。私、朝倉さんの事・・朝倉さんのそばにいたいんです。」
朝倉「・・・俺のそばに、俺のために・・本当か?」

真っ直ぐに愛子の目を見つめる朝倉。こくりと頷きゆっくりと彼を見つめ返す愛子の眼差し。お互いの視線が絡み合い、浅黒く日に焼けた朝倉の顔が白く透き通った愛子の顔に近づいてきた。そして遂に愛子の唇を朝倉の唇が捕らえた。動揺しながらも目を開けたまま愛子は彼を受け入れた。愛子の肩に朝倉の両手がかけられた。そしてゆっくりと瞼を閉じながら彼女は生まれて初めての口づけを交した。

公園の片隅で二人の影が重なりあった。昼下がりの柔らかい日差しが若い二人を優しく包んでいた。

マイベストソング② <恋人>Ⅷ 沸いてきた思い

約束の7月3日、愛子は学校の小体育館にいた。今年の合同展示会は特別会場を借りずに愛子の高校で行われる事になり、本校の生徒として雑事をこなさなければならなかった。

愛子は受付を担当し、来賓の客には名前を書いてもらい、時には会場内の案内もしなければならなかった。今年は「草原」という題材で出品した愛子だが、会場の作品をゆっくり見る間もないまま時間は過ぎていった。

時間は2時半になり、試合開始の時間になった。そわそわして落ち着かない愛子に友人のみどりは「どうしたの?何かあるの」と話しかけた。

愛子は少し迷ったが朝倉との事を簡単に説明した。
みどり「それだったら早く行きなさいよここは何とかなるから」
愛子「そんな事言っても・・今年はうちが会場だし」
みどり「でもお客さんも減ってきたしさ、いいわよ。何とかなるわ」
愛子「いいのよ、もう少し居るわ」
みどり「全く、あんたって・・」
生真面目な愛子の態度にみどりは呆れていた。

2時50分になり客は僅かになった。
みどり「ほんとに今いかなきゃ試合が終わっちゃうよ。さ、もう行かないと私知らないから」
愛子「わかった。ごめん、じゃ頼むわ。このお返しはきっとするから」
みどり「それじゃ、今度駅前のいつものお店でケーキおごってね」
笑いながらしゃべるみどりの言葉に愛子も微笑んで頷くと足早に会場をぬけ駅へ向かった。

駅から試合会場までは約30分、ぜいぜいと肩で息をきらして会場へ着くと、試合は終盤に迫っていた。良かった。間に合った。愛子はほっと一息ついた。

K大学との試合は白熱した展開が繰り返されていた。その時だ。ボールをキャッチし全速力で駆け抜ける朝倉の姿を見つけた。愛子は必死になって朝倉の姿を追っていた。彼はボールをしっかりと抱きかかえながらゴール下にトライを決めた。

W大学の学生から大歓声があがった。愛子も思わず拍手して「やったぁ」と呟いた。それから20秒ほどがたち終了のホイッスルが鳴った。大学生たちの中に挟まれて自分も少し大人びた気がして嬉しかった。‘私も朝倉さんのいる大学へ入りたい’微かな思いが愛子の中で湧き上がってきた。

マイベストソング② <恋人>Ⅶ 約束

展示会は3日後にせまっていた。必死でクレパスを走らせ描き続ける愛子。一点に集中してその画用紙に想いをはせていた。展示会当日、市内のとある会場は地元高校生や、美術関係者で込み合ってきた。愛子の高校の生徒もたくさん訪れ、それぞれの作品を観覧していた。

井上もラグビー部員数人を引き連れて、愛子の作品を目当てに足を運んでいた。半レギュラーで、決勝で敗れた井上は心身共に疲れきっていた。愛子の顔見たさにきたようなものだった。

井上が愛子の姿を見つけ、言葉をかけた。
井上「よお!すごい込んでるな」
愛子「おかげさまで。ちょうど今込んできたところよ」
井上「おう、たいしたもんだな。ところでお前の描いたのはどれなんだ?」
愛子「あそこよ。左から3番目のとこ」
井上「わかった、ちょっくら拝ましてもらうとするか」
愛子「拝ましてなんてそんなもんじゃないわ。でも井上君と関係あるものよ」
井上「ほう、なんだろ、面白そうだな。それじゃ見てくるよ」

井上は自分と関係あるものと言われ、興味津々だった。愛子の作品の前に立ち、その人物画を見て思わず彼は立ち往生した。井上の額からは、しだいに脂汗が滲んできた。作品の題材は「躍動」そこにはラグビーボールを脇に抱え、正面へ突進しながら駆け抜けている黄色いシャツを着た男性が描かれていた。

井上は忙しそうに美術部員と駆け回っている愛子の様子をちらと見て、言葉もかけずにその場を立ち去っていった。

合同展示会は5日間で終わり、愛子はほっと一息つきながらも心にぽっかりと穴があいたようだった。次に作品を展示するのは秋の文化祭だ。これまで目標を掲げて描いてきたが、それまでの期間があくので美術室で部員同士お茶を飲んだり、おしゃべりをしたりで暇を持て余していた。今取り組んでいるテーマは石膏だったが愛子に限らず部員のほとんどはのんびりと石膏を触ったり日によっては全然やらずに帰る日もあった。
それに窓から外を眺めてもあの朝倉の姿が見えない。高校総体が終わり、後輩に練習をつけに来ることがなくなったようだった。

ある日の午後、学校の休み時間に井上は話しかけてきた。
井上「あ、あのな早川・・」
愛子「ん、何?」
井上「あの・・その展示会の事だけど」
愛子「展示会?ああ井上君、来てくれたものね。お礼も言ってなかったものね。ありがとう」
井上「う、うん、あの絵はよく描けてたな」
愛子「そう、よかった。ラグビーを見て思いついたの。あのボールを持って走ってたのは」と言いかけた愛子に
井上「ああ、わかってるよ。あのシャツの色でな・・それじゃ」

愛子の言葉を遮り朝倉の名を聞きたくなかった井上はそういい残し、その場を離れた。愛子は慌てて帰ろうとする井上を怪訝な顔で見つめていた。

それから約1年が過ぎ、また高校総体の季節がやってきた。もしかして、あの朝倉がまた来るのかな、というほのかな期待を持っていた。愛子は窓からグラウンドを見つめながら、部員の姿を一人ひとり目で追っていた。5月の中旬になると、遂に朝倉の姿を確認する事ができた。約1年ぶりだわと思いながら、自然に愛子の口元が綻んだ。朝倉も愛子の視線を意識するようになったのか、練習の合間にたびたび窓を見つめては視線を返してくれる事が多くなっていった。そんな二人の様子を見るたびに、井上は面白くなかった。軽く舌打ちしてはボールを追っかけ全速力で走っていった。

それから2週間が過ぎ、愛子は部活を終えて学校を後にした。そこで後ろから声がした。「あ、あの早川・・くん」「えっ」と言いながら振り向いた後ろには練習中の朝倉が突っ立っていた。
愛子「は、はい」
朝倉「あのもしよかったら、今度K大学との練習試合があるんだけど、よかったら見にきてくれないか」
愛子「ええ、いいですよ。それでいつですか?」
朝倉「7月の3日なんだけど、どうかな?」
愛子「わかりました。時間は何時からですか?」
朝倉「午後の2半時からだ。そうだな、じゃあ携帯の番号を書いてあしたまたここで渡すよ」
愛子「そうですか、待ってます。」
朝倉「それじゃあ、明日な」
そう言いながら、足早にグラウンドへ戻る後姿の朝倉を見つめ、心があったかくなるのを感じていた。

7月3日は合同展示会の最終日だった。試合時間は展示会と重なる時間で午後2時半からだった。展示会は3時まで。それから電車で行ってもぎりぎりで間に合うかどうかわからない。しかし、愛子は少しぐらい遅れても絶対球場には向かおうと決めていた。その気持ちは揺るぎなかった。

今年の展示会は風景画で、自然を描くというテーマが決まっていた。自宅近くの川沿いにある山林風景をテーマに決めていた愛子は放課後まっすぐに学校を離れることも多く、現場に行ってはスケッチブックを広げていた。限られた期間で時間がいくらあっても足りない状態だった。高校総体の応援もラグビーに希望していたが去年、あまりにも差し迫っての状態で慌しかったため、美術部員は特別に免除してもらい、今回は応援を控える事にしていた。応援を楽しみにしていた愛子だったが、美術部で決めた事なので諦めるしかなかった。

翌日、待ち合わせた場所で朝倉を待っていると、頬に薄く泥をつけた朝倉が小走りにやってきた。
朝倉「ごめん、わりい。待ったか?」
愛子「いいえ、私もさっききたばかりです」
朝倉「そうか、じゃこれ」

朝倉は携帯番号を書いたメモ用紙の切れ端を差し出した。
愛子「じゃあ、こちらは私です」愛子も自分の番号を書いたメモを渡した。
朝倉「ん、もらっていいのか?」
愛子「ええ、どうぞ」
そっと朝倉の手が差し出された。その手を見つめ顔を上げ真っ直ぐに朝倉の目を見つめた。彼は恥ずかしそうに照れ笑いしていた。愛子も手を差し出して二人は軽く握り合った。
指が大きくて長くごつごつした朝倉の手だった。しかしその大きな掌に朝倉の温もりが伝わってくるようだった。

マイベストソング② <恋人>Ⅵ 応援

合同展示会は間近に迫っていた。愛子はクレパスを走らせ懸命に描いていた。どんなテーマにしようか迷っていたが10日ほど前にやっと決めて2割ほどが仕上がった。

窓から見えるグラウンドでは相変わらず運動部の掛け声やボールの音が入り混じっていた。ふいに窓に目をやりいつものように朝倉の姿を追った。いつしか愛子は頭の中で朝倉の事がいっぱいになっている自分が気がついた。水飲み場で初めて言葉を交わした日から特に意識が大きくなっていった。

それから一週間が過ぎ,県内の高校総体が始まり運動部以外の生徒は野球部、テニス部、ハンドボール、そしてラグビー部の外でプレーする部を中心に応援に借り出された。

希望した部を応援できる事になっていたのでもちろん愛子はラグビーを希望し隣の市のY市にバスで行き、応援席に着いた。応援席を見回すと最前列に朝倉はいた。中央の席に座った愛子のまなざしは自然に朝倉の方へ向けられた。

試合中、朝倉が後ろを振り向きちらっと目が合った。そこで朝倉はあの人懐こい笑顔をしながら頷いてみせた。愛子も軽く頷き微笑み返した。二人が顔を合わせたのはそれだけで朝倉は熱心に後輩の応援で声を張り上げていた。試合は66対23で愛子の高校の圧勝だった。拍手しながらラグビー部を褒め称え喜びの渦の中で最前列を見つめるとそこにはもう朝倉の姿はなかった。

翌日、翌々日と愛子はラグビーの応援に行かず、高校の美術室にいた。順当に勝ち残ったラグビー部はこの日決勝戦だった。もう展示会も間近にせまっているので最終段階にかかろうと居残りをする事に決めたのだ。

それから数時間後、校内アナウンスが流れ、決勝は惜しくも僅差で敗れたとの放送が流れた。

続・冬にあるべきもの

先日、町内の集まりで「消雪組合」という会合に行ってきました。「消雪組合」とは雪を解か す融雪装置を使用している近所の方々の組合の事で、毎年この件で会合 S2006yuki9S2006yuki7を行っています。うちの自宅前の道路は狭いので、その融雪装置を使用しない事には山のように雪が積もってしまい大変です。車も通れない状態になってしまいます。

私が小さい頃はどこの地域でもこのような装置が当然なくて、ただ道端に雪を放り投げ、端に寄せていたものです。しかし、昭和48年に未曾有の大雪に襲われて、積雪が3メートル(もっと多かったかもしれません)を超え、屋根に達するまでになりましS2006yuki10 S2006yuki11た。私も実家前に積もった雪に階段を作り、そこを使って玄関の出入りをした覚えがあります。そして遂に自衛隊が出動する事となり、市内のあちこちで自衛隊員がブルやショベルを使って除雪をする光景が見られました。この時の大雪を‘よんぱち豪雪被害’といって後々語り継がれる年になりました。昨年の大雪よりもこの当時の方が積雪があったように思います。

実家の父は、この時の模様を当時としては珍しい8ミリ映像(音無し)で撮っていて、数年前に地元のテレビ局へ送り、その時代の大雪コーナーとしてローカルニュースで流された事があります。アナウンサーが「大変貴重な映像を送っていただきました。雪の被害による初の自衛隊出動でした。この時の被害で、○○橋の川が半分近く雪で埋まり川が見えなかったそうです」と放送されました。この映像を見ると、もちろん現在のような融雪装置がなく近所の人達が総出で汗をかきながら重いショベルで雪寄せ(雪かき)をしていた映像が流れ懐かしく感じました。同時に、当時は必死だったんだと近所の大人たちの大変さが伝わってくるようでした。この年の豪雪被害から、だんだんと雪に対しての対策が自治体で真剣に検討され、現在に至るまでにずいぶんと改善されてきたと思います。

その「消雪組合」に、去年、うちが当番に選ばれてしまいました。少人数の会合ですが、私は初めての参加で一番年下ですので近所のベテラン奥様たちに聞きながら進めなければなりません。何かつまんで食べる物の買出しをしたり、集合場所の準備をしにいったり、終わった後も後片付けをしたりで帰りは午後9時頃になりました。

しかし、その帰りには「消雪組合」初参加のお蔭でこちらの地域ではめったに見る機会が少ないSp2170281『冬の星』を見る事が出来ました。星を見られるのは次の日天気がいい証拠ですね。いくら暖冬とはいえ、厳冬のこの地方では、冬の星空を見られるのは珍しいくらいです。当日は暖かく、気候条件も味方してくれたと思います。例年に比べれば、全然雪が少なく、嬉しいような物足りないような不気味なようなさまざまな感情が入り混じった年ですが、「消雪組合」の恩恵だと考える事にしておきます(笑)
※本当はもっとたくさん星がありました。写真はなかなか思うように撮れずに写した中で、左側にぽつんと二つ写っているのがおわかりでしょうか!?飛行機かな、それともただピントがずれて撮れただけかな?と思いましたが、‘流れ星’と幻想的に考える事にしましょう☆☆☆

ちょっと肌寒かったけど、真冬に顔を覗かせた星たちは、私達を暖かく見守り笑っているように感じました。

※上記の4枚の写真が去年の物で、下記4枚は3日ほど前に写した物です。 Sp2180292_2Sp2180285_1Sp2180284_2Sp2180283_1

マイベストソング② <恋人>Ⅴ初めての会話

愛子と同じクラスの男子ラグビー部員,井上孝介は愛子を特に意識していた。手足が細長く、すらりとした体型。目がぱっちりした黒いストレートヘアの愛子はクラスでも密かな人気があった。一見お嬢様風の愛子だが、しゃべってみると気さくで冗談も言う。女子へも気軽に声を掛けるしいやみがなくて彼女が近くにいるとふわっと空気が明るくなるようだった。

井上は愛子に近づき、趣味は何?好きな俳優のタイプは?と話しかけては何かと彼女に近寄ってきた。今日も話しかけてきた井上に、愛子は「ねえ、あのユニフォームが違う色の人たちが3人いるでしょ!?誰なの」と聞いてみた。井上は「ああ、みんなラグビーの先輩で今W大学に行ってる。今年卒業したばかりさ」聞けば黄色いシャツの男性は“朝倉義人”という男性でW大学にラグビーの推薦を受けて入学したのだという。期待の新人で1年生からレギュラーに座っているそうだ。県大会が間近になり、後輩たちの練習をつけにやってきているのだという。井上は「それがどうかしたのか?」愛子「ううん、別に、見かけない人達だなあと思ってたの」と一言答えた。

今日は部活は休みだった。学校の一斉テストのためだ。テスト期間中はどこの部活もテストが終わるまで休みだった。テストの期間中、愛子は早く部活が始まらないかとばかり考えていた。最後のテストが終わり、早速部室へ入った愛子はこれから市内3校との合同展示会をするための準備を進めていた。出品は自由だが、人物画という課題は決まっていた。さあ何にしようかと考えていると、外から運動部の大きく響く声やボールの音が聞こえてきた。窓の外を見ると、ラグビーの練習はやっていたが朝倉の姿はみえなかった。‘今日は来ないのかしら’とぽつんと心でつぶやいた。今日はテスト明けで、題材を決めて構想を考えるのみで帰る時間は自由であった。愛子も今日は特にする事がなく、1時間ほどで帰る事にした。

カバンを持ち、1階に降りて、靴を履き替え真っ直ぐ歩けば校門がある。その横に、グラウンドがある。愛子はグラウンド横まで歩きすぐその横にある水のみ場を見て、心臓がきゅんとしめつけられそうになった。朝倉がその水のみ場に顔を近づけ水を飲んでいたのだ。
一瞬通り過ぎようと思ったが、ぴたりと立ち止まった。朝倉をこんな近くの距離で、窓の2階から以外に見た事はなく、少しでもそんな空間を一瞬でも長く感じたいと思った。朝倉が水を飲み終え、愛子の方を振り向いた。愛子はどきっとしながらも会釈をし、微笑んだ。

朝倉は軽く笑いながら「やぁ、どうも」
愛子「練習にいらしてたんですか?」
朝倉「ああ、連中の県大が始まるまではずっと来ようと思って。今日は少し遅れたけどな」
愛子「あの、朝倉さん、いえ朝倉さんておっしゃるんですよね」
朝倉「そうだけど、どうして?俺の名前知ってるの?」
愛子「クラスの井上君に聞いたんです」
朝倉「そうか、あいつと同じクラスだったか。」
愛子「いつも窓から見ていて、どこのクラスの方かなと思ってたらこの学校の先輩だと聞いて」
朝倉「そうだね。君、よく窓からグラウンド見てたよな」
愛子「ええ、部活で一休みする時、ちょっと空気を吸いたいなと思って」
朝倉「そうか、空気を吸ってたのか。でも練習中は埃ばかりで俺たちはとても吸えたもんじゃない」
愛子「そうですね。そういえば埃が舞いますね。ふふふ」
朝倉「ははは、そういえば君の名は?聞いてなかったな」
愛子「あっ名前まだでしたね。ごめんなさい。早川といいます」
朝倉「早川か、いや早川さん・・・」
愛子「愛子です。早川愛子」
朝倉「俺は・・あぁもう知ってたな。朝倉だ。はじめましてでもないな」
愛子「そうですね。」
朝倉「おっ、もう行かなくちゃ。じゃぁまた!」
愛子「はい、また窓から見てますね」
朝倉「おお、いつでも見てくれ。でもこっち来て空気は吸わないほうがいいぞ」
愛子「あはは、わかりました。」

軽く笑いながら、手を挙げて、部員たちのところへ戻っていった。偶然窓以外のところで朝倉と会ったのも驚いたが、初めて彼とこれほど長くしゃべられた自分が信じられなかった。

つづく

マイベストソング② <恋人>Ⅳ 視線

次の日も愛子は窓からラグビーの練習を見て、動きの早いシャツの男性達を目で追った。それからしばらくは部活の途中で彼等を窓から見つめる行動が愛子の日課になっていた。

ある日、立って窓から身をのりだして彼等の練習を見ていた時、あの黄色いシャツの男性がころがってきたボール目がけて走ってきた。ボールを拾い上げ、頭を上げて二階の窓を見上げた形になった。男性の顔は真っ直ぐに愛子に向けられ思わず目が合った。浅黒く焼けた顔、太い眉、大きく切れ長な目だったが全体的に端整な顔立ちをしていた男性だった。こんなに近くで黄色いシャツの男性は見たのは初めてだった。ちょっとうろついた愛子は咄嗟に両手で窓を閉め、後ろを振り向き自分のいすに戻った。「なんてあからさまなことをしてしまったんだろう・・・失礼な奴だと思っただろうな」愛子は自分の行動を稚拙っぽく思わずにはいられなかった。

翌日、美術室に入った愛子はきのうの自分の行動が悔やまれて、つい窓に目をやった。今日は陸上部だけでラグビーとテニス部は休みのようだった。またその数日後、部室の窓からラグビーの練習を見ながらあの黄色いシャツの男性を見つけた。そろっと窓を開け、こっそりと男性を目で追っていたら、その男性はタックルを決めたその足でこちらに向かってきた。カッカッカッとラグビーシューズの砂を蹴る音が大きく聞こえてくる。あきらかに男性はこちらに向かって足を運んでいた。愛子は自然に胸が高鳴ってくるようだった。

そしてその目は真っ直ぐ愛子に向けられ、視線がぶつかり合った。今度はこの前のような失礼な態度はとれないと思い、軽くはにかみながら笑みを浮かべた。すると男性もニコっと微笑み軽く頷いてみせた。それに合わせ、愛子は軽く会釈した。それから数秒ほど二人は見つめあった。なぜか愛子の鼓動は少しずつ大きな波が打つようだった。頬もしだいに紅潮してきた。その男性の後ろには、白地に紺の横縞が入った部員が駆け足でやってきて「どうしたんすか?先輩」という声がし、男性は「ん、いや、わかった。今行く」と低く太い声で返し、愛子に軽く会釈して足早にグラウンド中央に戻っていった。

愛子はその後、練習は見ずに自分のいすに戻った。自分の足から頭のてっぺんまでじわじわと熱い体温が上昇していくように感じられた。それから先は思うようにクレパスは走らなかった。

つづく