vol.81 『和的解題』*4.5
デビューから一年、続く『乙女のワルツ』へのステップとして『青い麦』には歌手としてのサッコの新たなる決意があったことに触れておかなければならないでしょう。復帰当初ステージトークでは必ず峰子さんの話が出ていましたが、同期デビューの峰子さんも黄金の33年生まれで、新人賞を総なめにした『あなたにあげる』が三木作品だったと知ったのはごく最近のことで実はびっくりしたのでした。9月の青山ライブで安藤アナに扮した中島マリさんが笑いをとった「サッコがどんな歌手になりたいと思っていたか」の内容は、事実で、阿久著「夢を食った男たち」でも、-きみはどんな歌手になりたいんだ?と訊ねたことがあったが、「売れて忙しくなってスタジオからスタジオへ走りまわり、ああ忙しい死ぬほどよって言い、サインを欲しがる子らに悪いけど後でねって言ってことわるような歌手」と無邪気に話していたのである-と書かれています。そんな無邪気なサッコがデビュー一年を迎えてどう変わったのかサッコの心の中が当時週刊少女フレンドに掲載されました。-「去年までは学校に行けなかったり友達に会えなかったりで歌手の仕事がいやになることもあったけど…。今は忙しいほうが充実感があっていいわ。」とサッコは言う。まわりからいつもちやほやされて毎日ただ好きな歌を歌っているだけでいい。そんな憧れだけから歌手になったサッコだが今はすっかり考え方が変わった。どうやら去年の暮れの「日本歌謡大賞」で生まれて初めて味わった「悔しさ」がそのエネルギー源になっているようだ。発表後、日本武道館の楽屋で一人だけ目を真っ赤に泣きはらしていたサッコの顔が思い出される。「素直におめでとうと言うつもりだったのに新人賞に選ばれた西川峰子ちゃんがみんなに祝福されているのを見るとどうしようもなく悔しくなっちゃって…。」その日は家に帰ってからもサッコはずっと泣きっぱなしだったらしい。そんなサッコにある親しいディレクターがこう言ったと言う。「サッコ、君は今日から峰子ちゃんを追う立場になったんだ。ということはいつか追い越すチャンスがあるんだよ。悔しかったら泣かないで努力するんだね。」その一言を胸にサッコは新しい年に向かって船出をした。そして、サッコの無言の努力は『木枯しの二人』の大ヒットとなって実を結び同時に歌手として力を得たのだ。「今は将来の希望がいっぱい…。もっともっと一生懸命歌って、両親が年をとってからも楽しく暮らせるようにしてあげるのが私の夢なんです。」今の自分が楽しくて楽しくてしょうがないという感じのこのごろのサッコだ。(中略)いつでも変わらないひまわりのような明るい笑顔の下でサッコは今自分のまわりを吹き抜けていく春風の感触に心をときめかせ大人っぽく変身中だ。まるで新曲のタイトル『青い麦』のようにやさしくフレッシュに。(文/葛西則夫)- 最後の画像記事は旧ファンクラブ会報創刊号での阿久先生のお言葉です。
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